布団から

考えていることの記録です。

日記 2021年7月17日 何者でもないこと、マスター・オブ・ゼロ

1ヶ月前くらいから少しずつ観ていたドラマ『マスター・オブ・ゼロ』を観終わった。

結論から言うと、すごく好みだった。30歳前後の主人公たちに自分の人生や決断を重ねながら観た。そして、たくさんの場面で大いに笑った。

このドラマを誰かに紹介しようとすると、恋愛や結婚や出産、30代になると決めなくてはいけないとされているようなことの色々をテーマにしつつ、マイノリティとしての暮らしや、レイシズム、セクシズムにも触れていて深みもあってという褒め言葉がたくさん出てくる。もちろん、ウーンと思うところもあったんだけれど、1話ずつ大事にこのドラマを観ていく1ヶ月はとても楽しいものだった。どういうところが良かったか記録しておく。

 

(以下、ネタバレになるので注意!)

 

日本語では『マスター・オブ・ゼロ』となっているタイトルは、英語では『Master of None』で、"Jack of all trades, master of none"( 何でも屋のジャックは、何一つマスターしていない=多芸は無芸)ということわざから由来しているそうだ。

このタイトルが何を意味しているのかは、調べてみたがよくわからんかった(各話が Master of None presents…となっているのも気になるポイントだった。Master of Noneである製作陣が贈るってこと?)

しかし、観ている間、このタイトルの影響もあって、何かのマスターになる、何者かになる、ということについて繰り返し考えた。

 

このことについて、特に印象的だったのは、シーズン3の最終話中盤でのデニースとアリシアの会話。

以下全て拙訳。

Denise:Yeah but then, I was shinier. I was about to glow up. And now, I'm just like everybody else. 

デニース:うん、でも私はもっと輝いてた。階段を上がる直前って感じで。でも今は、みんなと同じような人間。)

Alicia: And what's wrong with being like everybody else?

アリシア:で、みんなと同じで何が悪いの?)

 *like everybody elseは字幕では「ありふれた人間」となってた。なるほど~。

 

破天荒で規格外な人生を生きているわけではないし、何者でもないのだけれど、それで何が悪い?というのが、『Master of None』のタイトルの言わんとしてることなんじゃないかなあと思っている。

デフは、パスタ修行の旅に出て、パスタ作りを完璧にはマスターせず(おばあちゃんの全合格は得られず)にイタリアを離れるし、シーズン3では映画に出るほうじゃなくて経理部で仕事していることが明かされる。デニースは、ベストセラー作家になったけど2作目が奮わずオフィス勤めになる。そうやって like everybody elseになっても、何が悪いのよ、ということ。

 

これは漫画『A子さんの恋人』で、U子ちゃんが言う(海に出ていなかったとしても)「かわいそうじゃない」という言葉と重なった。

(『A子さんの恋人』を読んでいない人には何のこっちゃの話だねA子さんの恋人』も、『マスター・オブ・ゼロ』と並んで30代での決断についての名作だと思うので、まだ読んでなくて『マスター・オブ・ゼロ』気に入った人はぜひ読んでほしい。)

 

特に何者かにはなっていないけれど毎日それなりに楽しく生きている自分にとって、とても元気付けられるメッセージだった。デフは司会者になれてるし、デニースは一度とは言えベストセラーを出してるけどね。比べるもんでもないが…。

何者かになるなんてどうでもいいし、でも目標を持っていてもいいし、それに向けて頑張ることは素敵なことよね、と最近思っている。

 

 

それと、「今が幸せということを大事にしようよ」というのもこの作品から受け取ったメッセージだった。

シーズン1の9話で、レイチェルとデフの会話。

RachelDid they live happily ever after

(レイチェル:そのあとずっと幸せに暮らしましたとさ?)

Dev: Mmm, I dont know about ever after’, but theyre pretty happy now.

(デフ:うーん、「ずっと」かどうかわからないけど、今は幸せだよ。)

 

シーズン3の最終話でも、二人の関係が嫌な終わり方をしそうだというデニースに対してアリシアは言う。

In this moment, right?(Were just two bad bitches laid up in these old peoples home.()And every things wonderful

(今は、いい?こう考えよう(略)私たちは老人ホームに入ってる二人のビッチだって。(略)それで、全部が最高なの。)

二人の関係もパートナーが居ながら元妻と繋がっているわけで(それってどうなのよ)安定した関係じゃないんだけど、まあそれでも今は心配せずにこの幸せを楽しもうよということなのかなと解釈した。

この先子供が欲しいかとか、こんなはずじゃなかったとか(シーズン3でデフの彼女のレシュミが言うセリフよ…!)過去のことや未来のことを考えて不安になったり絶望したりしがちだけれど、そうじゃなくて今の幸せに向き合うってなかなか難しいけど大事なことよね…と素直に思った。

 

長くなってしまった。とにかくいいドラマでした。

自分自身のことについてもいっぱい考えた〜、お腹いっぱいです。語学の勉強になるかなと思うので、チェコ語の吹き替えでもう一回観ようと思っています。

 

日記というか感想だったね、今日は以上!